内容はまさにその通りだ。
「実存」「エロティシズム」など哲学的な用語が使われているが、つまりは平和にとって必要なのは他人・他文化などに対し、人がイカに対して接しているように「モノ」として接してはいけないということ。相手も元は同じなんだと認識すること。愛すこと。それが平和にとって最重要なことである、としている。
その通りだ。
その通りだが、残念ながら理想論の域を抜けることはできないんだよなぁ。
題名が「イカの哲学」だし、その文章自体は大学院の哲学科を出ているから、どうも観念的になってしまうのは仕方ないのだが、現実的な方法論は出てこないし、じゃあどうするの?と思ってしまう。
もちろん主張はまさしくその通りで、そうなってほしいと本気で望む。
だが、現実はそれを模索し、考えに考え抜いた上どうしようもないから、いわば次善の策として現実的な平和論を追求しているのではないだろうか(著者の言うネガティブな平和)。
どうもこの本の著者は護憲派のようであるが、護憲派の人たちは憲法9条だとか原爆経験国という武器を大手振ってかざし平和を訴えるが、その主張を聞くたびいつも理想論だなと感じてしまう。
原爆経験国だから一層平和の大切さ、核の危険さを知っている訳でもなかろう。もっと危険で辛い思いをしている国はいまも世界中に存在する。
憲法9条も実質守れていないと言っていい。それは指導者が悪いのではなく、現実的に綺麗事を言っていられないからだ。
マキャベリは「軍事力を持たない国はまず滅びる」と言っているが、その通りで日本が滅びずいま生きながらえているのはアメリカとの同盟と優秀な自衛隊がいるからである。自衛隊が軍隊となりつつあるのは、指導者の軍国主義思想によるものではなく、現実的にそうしなければどうしようもないからだ。
国際社会はリアリズムなのである。
大きく主題からずれてしまったが、この本の主張は一読する価値はある。
特に最後のエコロジーの部分は宮崎駿が作った「もののけ姫」の考え方とも軌を一にするように思う。
ただし「思想」としてという制約がついてしまうことは、悲しいことだが仕方がない。