ニュートン、コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、アインシュタイン、ハイゼンベルク、ラマヌジャン、ノイマン、ホーキング。
主に自然科学の分野における「天才」と呼ばれる人たちである。
自然科学というのは特に「天才」が生まれやすい分野であるが、彼らも決して生まれた瞬間から天才とみなされていたわけではない。
それぞれ様々な家庭事情があり、様々な条件が揃ってその頭角を現してきた。
天才とはどのように作られるのだろう?
そのヒントはいくつか本書で言及されていた。
ひとつは、みな基本的に独学者であるということ。
人から教えられることや、カリキュラムで時代を動かすようなことは考えつかない。
ふたつに、基本教育、有り余るほどの本、物を考えるための自由な時間。
これらの環境が重要であり、その典型はニュートンだった。
天才たちの人生や学問界でのあり方はとても面白い。
ハイゼンベルクのように核兵器という人類を破壊しうる悪魔の武器を作り出すきっかけになってしまった天才や、アインシュタインのように別に彼がいなくても数十年のうちに他の誰かが同じ発見をしていただろうといわれている天才だったり。
彼らの生き方や考え方、立ち振る舞いをみていると勇気をもらう。
決して自分自身はひとりじゃないのだと。
比肩しうるは所詮現代を生きている周りの人間ではなく、過去の先人たちなのだと。
過去との対話を忘れるな。
価値があるのは周りの人間の意見や価値観ではなく、過去の先人たちの立ち振る舞い方やその思いだ。
常に先人が見ていると思え。
本書のタイトル「天才は冬に生まれる」に関しては最後の章で触れられるが、どうやらこの本で紹介されている天才たちは全員冬生まれ、特にやぎ座が多いらしい。
理由は特にわかっていないようであるが、本書で著者は脳科学からアプローチしたひとつの仮説を提示している。
実は僕自身やぎ座の生まれであり、なんだか急に自分の誕生日が誇らしく感じる。
最後に本書でもっとも印象に残った一節を引用する。
「科学者は、真実の探求を止めることが出来ない。為政者は、そこに、自己の利益を見出す。人類のこの愚行は、有史以来、ずっと繰り返されている。人類滅亡への螺旋階段である。」
それでも人は真実を知ることをやめられないのである。
その最もたる存在が「天才」といわれる人間だ。